インバウンド消費の次の成長戦略として、地方で“稼ぐ観光”を実現するために必要な条件を、体験設計・人材・データ・交通・地域連携の観点から解説します。
インバウンド需要が回復・拡大する中、観光は日本経済の重要な成長エンジンとして再び注目を集めています。しかし、都市部への集中が続く限り、地域全体の経済効果は限定的になりやすいのも事実です。
いま求められているのは、単に観光客を“呼び込む”のではなく、地方でしっかりと“稼ぐ観光”をつくり、地域内にお金が回る仕組みを整えることです。観光が「一時的なブーム」で終わらず、「継続的な産業」として根付くためには、いくつかの条件が必要になります。
本記事では、インバウンド消費の次のフェーズとして、地方で“稼ぐ観光”を成立させるための条件を整理します。
1. 「観光資源」ではなく「体験価値」を商品化する
地方には魅力的な自然、食、文化が数多くあります。しかし“稼ぐ”ためには、それらを単に見せるだけでなく、体験として設計し、価値として販売できる形に落とし込む必要があります。
稼ぐ体験価値のポイント:
- 見学ではなく「参加・体験」型にする
- ストーリー(地域の背景や人の想い)を可視化する
- 季節性や限定性を活かして単価を上げる
- 外国人目線で“わかりやすく”パッケージ化する
「あるもの」を並べる観光から、「体験として設計する観光」への転換が重要です。
2. 単価を上げるには“滞在時間”と“満足度”が鍵
地方で稼ぐ観光を実現するためには、訪問者の消費額を上げる必要があります。そのために最も効くのが「滞在時間の延長」です。
滞在時間が伸びると:
- 宿泊が増える
- 飲食の回数が増える
- 体験プログラムに参加する余裕が生まれる
- 地域内の移動も発生し、複数事業者にお金が落ちる
日帰り観光中心ではなく、宿泊や連泊を前提にした設計が“稼ぐ”に直結します。
3. 地域の“受け入れ力”を支える人材と運営体制
観光は「人」がつくる産業です。地方で稼ぐためには、魅力ある体験を提供できる人材と、継続運営できる体制が欠かせません。
必要な要素:
- ガイド・ホスト人材の育成(語学だけでなく接客・安全管理も)
- 予約管理・カスタマー対応の整備
- 価格設計(安売りではなく適正価格で)
- 小さく始めて改善を回すオペレーション力
観光商品は作って終わりではなく、改善しながら育てることで価値が上がっていきます。
4. 交通と導線が整わないと“お金が落ちない”
地方観光の大きなボトルネックは移動です。アクセスが悪い、乗り換えが難しい、情報が少ない—これだけで観光客は途中で離脱します。
稼ぐ観光のための導線整備:
- 観光地間の移動手段(バス、オンデマンド交通、タクシー連携)
- 多言語での案内と予約導線
- 駅・空港からのアクセスを“商品化”する発想
- モビリティ+体験+宿泊をセットで考える
移動の不便さを解決できる地域ほど、滞在と消費が増えます。
5. “データ”で観光を運営する時代へ
観光は感覚だけで伸ばすのが難しいフェーズに入っています。稼ぐ観光をつくるには、データを使って改善できる仕組みが必要です。
活用すべきデータ例:
- どの国の人が、どの季節に来るのか
- どの体験が予約されやすいのか
- 滞在時間や消費行動の傾向
- 離脱ポイント(予約が途中で止まる理由)
データを見ながら改善すると:
- 需要がある商品に投資できる
- 無駄な施策が減る
- オペレーションの最適化が進む
観光は“運営”が強い地域ほど稼げます。
6. 地域内で“連携して売る”ことで経済効果が広がる
地方観光の課題の一つは、事業者が個別に動き、利益が分散しにくいことです。稼ぐためには地域全体で体験・宿泊・飲食・交通を連携させる必要があります。
連携によるメリット:
- 体験+宿泊のセット販売ができる
- 観光客が地域内を回遊しやすくなる
- 小さな事業者も収益機会を得られる
- “地域ブランド”が強くなる
観光は「点」より「面」でつくるほうが強い産業になります。
7. サステナブルであることが“選ばれる理由”になる
今後の観光では、環境や地域コミュニティへの配慮が評価される時代になります。特に海外旅行者は「その地域を支援する旅」「文化に敬意を払う旅」を求める傾向が強まっています。
稼ぐ観光とサステナブルは両立できる:
- 過度な混雑を避ける設計
- 地元産業(農業、工芸、漁業)と結びつける
- 文化資産を守るルールづくり
- 地域住民も誇れる観光モデル
“稼ぐ”ことは搾取ではなく、地域を守るための持続可能な仕組みにもなります。
結論(まとめ)
インバウンド消費の次のフェーズでは、地方が“稼ぐ観光”を作れるかどうかが、日本の観光産業の成長を左右します。
地方で稼ぐ観光を成立させる条件は、以下の通りです:
- 観光資源を体験価値として商品化する
- 滞在時間を伸ばし、単価と満足度を上げる
- 人材と運営体制を整え、改善を回す
- 交通導線を整備して離脱を防ぐ
- データで運営し、施策を最適化する
- 地域内連携で回遊と経済効果を広げる
- サステナブルで“選ばれる理由”をつくる